重畳パススコアマップ

重畳パススコアを使う背景

分散プログラム、プロセッサ開発、プロジェクトマネージメント、医療、化学、建築、災害復旧。こうしたタスクグラフが用いられるシステムや仕組みを新規に立ち上げる場合、あるいは、業務上の必要性によりタスクの改善改良を行なう場合、これらシステムや仕組みのタスク一つ一つに対してクライアントと共に詳細な検討を重ね、それを元にスパイラル的な試行錯誤を重ねながら完成を目指す。 一見、地道に見えるこういった方法こそが、実は着実で確実な方法であるのは間違いありません。

もちろん、株式会社 多様性総合研究所もこうした詳細な検討と試行錯誤は、業務やタスクの改善にとって最も重要なものと位置づけ、業務・タスクやコンピュータシステムの新規立ち上げやタスクの改善改良に関するコンサルティングを行なっています。

しかしながら、一方で、予算や期限、改変後の信頼性や検証といった大きな制約により、

  • 新規立ち上げの期限は決まっている。検証の日程は何段階かに分かれているため、それぞれの検証が次の検証へ有益につながるようタスクに優先順位を付けて取り組みたい。」
  • 「全面的なタスクの改善が必要だ。最終的には、全部に手を付けなくてはいけないのはわかってはいるのだが、今、一斉に検討に入るのは予算的にも人員的にも非常に厳しい。まず予算や人員を集中的に投入するべき箇所を割り出したい。」
  • 「試算と違い、処理量が毎日のように増大していっている。このままだと後数か月で締め時間が間に合わなくなりそうだ。なんとか今すぐタスクの改善に着手する必要があるが、立ち上げ後の投資回収フェーズでもあり、追加予算はもうほとんど期待できない。」
  • 「業務上の理由により、改良して新しいタスク構成を組み込む必要がある。ただ、現在動いている業務でもあり、その信頼性と期限を考えると、変更後、大規模な検証が必要となるような全面的な変更は避けたい。」

といった切望ともとれる切実な状態を株式会社 多様性総合研究所はこれまでの数多くの経験を通して見てきました。

こうした切実な状態に対して、株式会社 多様性総合研究所はなんとか協力できることはないか?一気に解決とはいかないまでも、取っ掛かりを作ることはできないか?と常に考え、タスクグラフの解析・予測時、第2、第3のクリティカルパスを考慮し、業務・タスクやコンピュータシステムの新規立ち上げやタスクの改善改良に貢献できる重畳パススコア重畳パススコアマップを国際特許出願し、コンサルティングソリューションとして加えることに成功したのです。

重畳パススコアを使った改善の効果

シミュレーションにより、重畳パススコアによる改善効果を見てみましょう。例えば、予算や期限といった制約により、改善できるタスク数に制限があるという状態を想定します。多様性のある用途を考慮し、プロジェクトマネージメント・医療マネージメント、機器制御、コンピュータシステムを想定した、以下の3つのタスクグラフを用意しました。

3つのタスクグラフの内、キャンプでカレーを作る手順のタスクグラフは本ホームページではもうおなじみのタスクグラフですが、残りの2つは初めて見るタスクグラフです。

これら2つのタスクグラフは、標準タスクグラフセットとして、早稲田大学 理工学術院 基幹理工学部 情報理工学科 笠原研究室で、マルチプロセッサスケジューリング問題のベンチマーク集として公開されているものです。 今回の重畳パススコアの使い方はマルチプロセッサスケジューリング問題とは少し違う問題を解決するためのものですが、この標準タスクグラフセットには実アプリケーションのタスクグラフも含まれていることから、タスクグラフの一例として利用させてもらうことにします。

これら3つのタスクグラフを実際の使用状態に近づけるため、次の手順でタスクの所要時間が正規分布に従って変動した時のタスクグラフを生成しました。

  1. それぞれのタスクの所要時間として指定されている時間と、変動係数を使って、正規乱数を発生させる。
  2. 正規乱数を、それぞれのタスクの所要時間としてタスクグラフの再構成を行なう。
  3. 再構成したタスクグラフクリティカルパスの経路を求め、タスクの所要時間の変動により変化したクリティカルパスの経路を記録する。
  4. 上記1~3の手順を、計100回行ない、タスクの所要時間が正規分布に従って変動したタスクグラフを生成する。

タスクの所要時間の変動により変化するクリティカルパス

タスクの所要時間が変動係数50%の正規分布となる条件で、前述の手順に従って実際にシミュレーションを行なってみることにします。シミュレーションの結果、生成されたタスクグラフは次のようになりました。

キャンプでカレーを作る手順で、タスクの所要時間が正規分布に従って変動した時のタスクグラフ ロボット制御プログラムで、タスクの所要時間が正規分布に従って変動した時のタスクグラフ 電子回路シミュレーション(ランダムスパース行列求解プログラム)で、タスクの所要時間が正規分布に従って変動した時のタスクグラフ

タスクグラフ中、線の太さは変動したクリティカルパスの経路となった回数に依存し、赤い色の線は、本来のタスクの所要時間として指定されている時間で計算したクリティカルパスの経路を示しています。 また、タスク内の文字は上から順に、

  1. タスク名
  2. タスクの所要時間として指定されている時間
  3. 変動したクリティカルパスの経路上にタスクが位置した回数

を示しています。

これらのタスクグラフを見ると、タスクの所要時間が変動する場合、変動したそれぞれの時間で計算されたクリティカルパスは、本来のタスクの所要時間として指定されている時間で計算したクリティカルパス(以後、「指定時間のクリティカルパス」)と一致しないことも多いことがわかります。このように、制約によりいくら改善できるタスク数に制限があるとはいえ、指定時間のクリティカルパスだけを頼りに改善するタスクを決定した場合、対象となるタスクには必ず「漏れ」が生じてしまいます。

タスクの「漏れ」を放置して改善が完了したと判断してしまえば、「漏れ」たタスクの場所は、ある日突然不都合を起こす潜在的な危険を持つ場所となり、結果的に、その危険が現実のものとして現れた後、完了したと思っていた「改善」を再度繰り返すことを余儀なくされてしまうのです。

改善に対して、こうした場当たり的な対応を続けていれば、最終的には、「予算や期限といった制約を重視したつもりが、事態が収束した段階では予算も期限も大幅に超過してしまっている。」という最も好ましくない状態に陥ってしまいます。改善に関与したことのある方は誰しもこうした状態を見聞きしたことがあるのではないでしょうか?

指定時間のクリティカルパスによるカバー可能率と
重畳パススコアによるカバー可能率

タスクの「漏れ」を考える場合、まずは指定時間のクリティカルパスでどの程度、変動したそれぞれの時間で計算されたクリティカルパスをカバーできるのか認識している必要があります。

先のタスクグラフを見ながら、変動したそれぞれの時間で計算されたクリティカルパス各100回の内、指定時間のクリティカルパスでカバーが可能だった回数と不可能だった回数、また、重畳パススコアでカバーが可能だった回数を数えていくと、以下の表のようになります。

タスクグラフ名 指定時間のクリティカルパスでカバー可能 指定時間のクリティカルパスでカバー不可能 重畳パススコアでカバー可能
curry 39 61 100
robot 15 85 100
sparse 44 56 100

指定時間のクリティカルパスでのカバー可能率に着目すると、curryの場合39%、sparseの場合44%、robotに至っては15%に留まることがわかります。これに対して、重畳パススコアでは、その原理上、カバー可能率は100%ということになります。

もちろん、重畳パススコアを使用すれば過分なく、全て完璧にタスクを特定してしまえるというわけではありません。しかしながら、指定時間のクリティカルパスのみで対象タスクを検討する手法に比べ、不足分としてのタスクの「漏れ」は無くなり、ある日突然不都合を起こす潜在的な危険を持つ場所の発生や、改善を際限なく繰り返すといった事態を防ぐことが可能となります。

クリティカルパスのみの改善率の限界

次に、時間による変動の影響を最も受けてしまったrobotに関して、クリティカルパス重畳パススコアを使用した時の着手率、改善率を詳細に追っていきましょう。

クリティカルパス変動による改善率の変化

robotでのクリティカルパスによる改善の効果のグラフより、クリティカルパスは着手率20%程度のところで改善率は頭打ちとなってしまっています。これは『クリティカルパスとは』の説明のところで、「一般的に、クリティカルパス上のタスクは、タスクグラフの全タスクの内、20%程度を占めるといわれている」と触れた通りの結果となっております。

各タスクの所要時間が変動してしまった場合、着手率を100%としても変動させる前と比較すると改善率は50%程度に落ち込んでしまいます。タスクグラフの所要時間を見込み、クリティカルパスの経路を改善したとしても、実際にそのタスクを動かした時に改善できる時間は半分程度になってしまう、という結果となってしまったので、クリティカルパスのみの経路を改善するという方法は、時間の変動をあらかじめ予測できるタスクグラフでは、所要時間を改善する最善の方法ではないと考えられます。

重畳パススコア使用時の改善の性質

  • クリティカルパスと比較した場合

非クリティカルパス上での重畳パススコアによる改善とクリティカルパスによる改善

重畳パススコアによる改善率とクリティカルパスによる改善率のグラフを見てみましょう。クリティカルパスは前にも触れましたが着手率20%程度で改善率50%となり頭打ちとなってしまいます。しかし重畳パススコアは頭打ちとはならず、クリティカルパスのさらに上を目指すことができ、着手率100%では改善率を100%にすることが可能となります。

  • 単純時間順と比較した場合

非クリティカルパス上での重畳パススコアによる改善と単純時間順改善

重畳パススコアによる改善率と単純時間順による改善率のグラフを見てみましょう。ここでは、タスクグラフ全体を見渡し、時間がかかっているタスクを抽出し改善していく、という方法を、単純時間順と定義しています。単純時間順は、クリティカルパスとは違い改善率を100%まで上げることが可能となります。しかし効率は非常に悪く、着手率20%の時点を比較すると重畳パススコアでは30%改善することができるのに対し20%の改善にとどまり、着手率50%では重畳パススコアでは90%の改善に対し60%となり、30%もの差が生じてしまいました。

まとめ

重畳パススコアは、時間の変動に強く、クリティカルパスよりも安定した高い改善率を誇り、単純時間順で追っていった時よりもはるかに効率よくタスクを改善できることがシミュレーションの結果より実証されました。重畳パススコアを使用すると、クリティカルパスではカバーしきれなかった時間やコストが変動した際の、第2、第3のクリティカルパスになる重要度が高いタスクも的確にわかり、そのタスクを検証していくことによって従来よりも手間が少なくスピーディーに業務改善することが可能となります。予算や時間の都合上、着手率を100%まで上げることは現実的ではありませんが、着手率が50%の時点でも90%もの改善効果を見込むことが可能となるので、重畳パススコアは、クリティカルパスに代わる新たなタスクグラフ解析方法として期待することができます。

ライセンス契約代理店契約について

国際特許出願済みである重畳パススコア重畳パススコアマップなどの、タスクグラフ解析技術は、組み込み機器やソフトウェアへの適用など、幅広い分野への応用が可能です。 これらの技術への御社の事業への適用に際し、ライセンス契約も承っております。 参考資料として、【要約書】(無償)、及び、【明細書】(有償)の送付の準備もございますので、下記より、お問い合わせください。

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